東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)132号 判決
一 前掲請求の原因事実中、本願考案について、実用新案登録を受ける権利を共有する原告らの出願から審決の成立に至るまでの特許庁における手続および審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。
二 右事実によると、原告アポロン音工は、右審決の名宛人とされていないから、その取消を求める本訴において原告適格があるか、いささか問題があるので、まず、この点に言及する。右審決は、原告らが共同してなした本願考案の登録出願の拒絶査定に対する不服の審判について、その請求が原告らにおいて共同してなすべきものであつたのに、原告パイオニア単独でされた点で不適法であるという理由により、これを却下したものであるが、既に右拒絶査定に対する審判請求のできる期間が経過した以上、原告らが改めて共同して審判請求をすることはできないから、右審決の取消を求める本訴の帰趨は、本願考案について実用新案登録の道が残されるか否かを左右し、その共同出願人たる原告らにとり全く同じ意義を有するものであつて、これにかけられた法律上の利益は原告らについて全く同じというべきである。
また、本訴請求は、右審判請求が原告アポロン音工を審判請求人に追加したことによつて補正され適法になつたという主張を理由付けとし、同原告を審判請求人と認めなかつた審決の判断の当否を争うものであるから、右主張を前提とすれば、審決は、実質的には、同原告の審判請求を排斥したに等しい。
したがつて、これらの点に鑑み、原告アポロン音工が、原告パイオニアと共同の原告として右審決の取消訴訟を提起しようとするときは実用新案法第四七条第二項、特許法第一七八条第二項にいう審判の「当事者」に準ずるものとして右訴につき原告適格を有するものと解するのが相当である。
三 そこで進んで、右審決の取消事由の存否について判断する。前記のように原告らは本願考案について共同して実用新案登録の出願をしたところ、特許庁は拒絶査定をし、昭和四七年八月二三日原告パイオニアにその拒絶査定謄本の送達をしたのであるから、実用新案法第五五条第二項、特許法第一四条の規定により、その送達の効力は原告ら両名について生じたものというべきである。
そして、前記事実によると、原告パイオニアは、これに対する審判請求をすることができる、右査定謄本の送達の日から三〇日の期間内の同年九月二〇日単独で審判の請求をし、原告らは右期間の経過後の昭和四八年一月二六日共同して補正書を提出し、これにより審判請求人の表示を原告両名に補正したものであるが、実用新案法第四一条、特許法第一三二条第三項によれば、実用新案登録を受ける権利が共有である場合、その出願に対する拒絶査定の不服審判請求は共有者全員が共同してすることを要するから、原告パイオニアが単独でした審判請求は不適法というべきであり、また、原告らが共同してなした審判請求人の表示の補正は、原告アポロン音工のためには原告パイオニアと共同して審判を請求する趣旨を有するものと解されるにしても、その審判請求期間経過後のことに属するから、審判請求としては不適法というべく、これにより原告パイオニアが単独でした審判請求の瑕疵を治癒するに由がないものというべきである。
なお、成立に争いのない甲第三ないし第五号証によれば、本件審判の審理中、審判長は昭和四八年一月一六日発送の書面をもつて原告パイオニアに対し審判請求書は請求人アポロン音工の住所、名称の記載がなく、法令に定めた方式に違反するから、書面発送の日から四〇日以内に補正されたい旨を指令したことが認められ、原告らは審判請求人の追加補正をもつて審判長の右指令に基づくという理由により適法であると主張するが、審判長の右のような指令により、審判請求の適法要件に関する実用新案法の規定の適用が左右されるいわれはないから、右主張は採用しない。
四 以上のように、本件審判請求は、不適法であつて、その補正をすることができないから、実用新案法第四一条、特許法第一三五条の規定の適用により、これを却下した審決の判断は正当であつて、審決に原告ら主張の違法はない。
よつて、本件審決の取消を求める原告らの本訴請求を失当として棄却する。